ビール会社のマーケティング・ケースは、マーケティングを勉強する場合、最もわかりやすいケースです。理由としては、日本市場の場合、実質、大手4社が市場を寡占しており、その4社で、市場をとった、とられた、をしています。
また、ビール市場は、明らかに成熟市場で、マーケティングのさまざまなツールを駆使して活動をおこなわなければなりません。
ということもあり、東洋経済の電子版に、ビール業界の最近の動向についてまとめの記事が掲載されていたので、それを参考に考えてみたいと思います(http://www.toyokeizai.net/business/industrial/detail/AC/f96b5916f034d6165c897135340e3774/page/1/)。
まず、ビール系飲料を取り巻くマーケティング環境に、経済環境として「不況」というキーワードがあります。
つまり「不況」→「節約志向」→「内食回帰」の流れによって、仕事帰りに外で飲むより、家で晩酌する人が増えているということです。
そのため、「節約志向」を強める消費者は、おのずと安価な第3のビールに購買をシフトするということになります。
ですので、ビール系飲料全体の総需要が落ち込む中、第3のビールだけが猛烈な勢いで売上を伸ばしています(1〜5月の出荷数量は、ビールと発泡酒が前年同月比7・0%、同14・3%とそれぞれ大幅に落ち込む一方、第3のビールだけは同26・3%増と急伸)。
このような現状から、たとえば、BCGのポートフォリオ分析でプロットしてみると、第3のビールは「スター(市場占有率が高く、市場成長率が高い)」か「問題児(市場占有率が低いが、市場成長率が高い)」のいずれかとなります。
ビール、発泡酒は「金のなる木(市場占有率が高く、市場成長率が低い)」か「負け犬(市場占有率が低く、市場成長率も低い)」となります。
この点からいっても、各社とも、第3のビールに社内の資源を傾注するのは事業戦略のセオリーから正しい選択です。
ということから、第3のビールに関するマーケティング目標は「第3のビールのシェア獲得」となります。
個別のマーケティング・ツールの戦術を見ていくと、
顕著なのが製品政策です。
各社とも、ビール需要の最盛期を前に「新製品」を矢継ぎ早に発売しています(今年2月にはアサヒビールが新製品「オフ」を発売したばかりだが、9月に「麦搾り」を投入します。サントリーは4月に「ザ・ストレート」を、キリンビールも6月末に「コクの時間」を発売しています)。
この矢継ぎ早の「新製品」投入は、単体のヒット・ブランドだけでなく、複数のブランドでのシェア獲得を意図しています。
そのため、細かく細分化されたニーズに対応するかたちで「新製品」を展開しています(たとえば、これまで第3のビールは麦芽や大豆など原料の違いで差別化してきましたが、今年は味や機能性で細分化(ポジショニング)をしており、たとえばアサヒの「オフ」は糖質・プリン体を抑えて機能性を訴求し、キリンの「コクの時間」やアサヒ「麦搾り」では、コクを重視したビールに近い味を売りにしています)(http://arai-smaoffice.livedoor.biz/archives/1315558.html)。
しかし、この矢継ぎ早の「新製品」の投入は、消費者の選択行動に果たしてどれだけ影響するのかが問題で、実際、商品棚の前で消費者が「このブランドはこういう特徴があって、こういう味だから買おう」などという製品理解をして購入するかというと、そうではではないと思います。
ゆえに、「新製品」の連発は、消費者に混乱を与えるだけになるかもしれません。
第3のビールのように、比較的低価格の製品の購買行動は、商品を正確に理解してから購入するというケースはまれだと思います。
となると、「イメージ」か「価格」ということになります。
「イメージ」はプロモーション活動によってある程度植えつけられますが、消費者は上位ブランドしか記憶しないので、後発ブランドを投入した場合、まずは消費者の短期記憶に残し、店頭での購買につなげるということが必要となります。
そのため、大量広告の投下によってイメージ訴求を徹底し、店頭でのPOPやSPを連動し、購買につなげるという活動になります。
しかし、需要の価格弾力性が高いと思われる第3のビールの購買時点(店頭)での最終購買決定要因は「価格」の可能性があります。
他社、他ブランドよりも「1円でも安く」が重要となります。
ビール各社は、これまで同一カテゴリー内での「価格」による競争はさけてきたことから、「価格」がクローズアップされることが多くありませんでした。
けれども、先日のサントリーによるPBブランドの投入は、まさに、価格政策です(http://arai-smaoffice.livedoor.biz/archives/1314814.html)。
このサントリーのPBブランドの投入は、流通チャネル政策でも画期的です。
流通小売企業は、当然、第3のビールの取り扱いを増やしており、その増加分の棚を確保することは重要です。
また、第3のビールは、「会社帰りにコンビニで1本買って……」なのか、「スーパーや量販店でのまとめ買い」(ブランド、ターゲットによって異なると考えられます)なのかで、「どこで売るか」を考えなければなりません。
ただ、ビール系飲料で重要な居酒屋ルートは、「内食回帰」と第3のビールの特徴から考えると、大きなチャネルにはならないと考えられます(余談ですが、
サッポロが先日発表した、「ヱビス スタウト クリーミートップ」が業務用限定なのは、環境分析からは逆の選択で、あえて逆転の発想(「脅威」を「機会」と考える)をしたのだと思います)
いずれにしても、ビール系飲料の夏の陣は、「第3のビールを制する者が勝つ!」ということになりそうです。
その動向に注目です。
ちょっと長くなりました。最後まで読んでいただいてありがとうございます。
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